トリチウム(福島第一原発の問題)

みなさんこんにちは

特殊水処理器「新ん泉」 AtoZの桜井です。

福島第一原子力発電所の事故により発生している処理水のタンクがこのまま手を付けなければ2023年9月には満杯になると言う事で、昨年8月より海洋放出が始まりました。

福島第一原子力発電所より放出されるトリチウムを含んだ処理水は危険なのでしょうか?

今回はトリチウムを含む水について考えてみましょう。

汚染水≠処理水

トリチウムを含む水は「ALPS(アルプス)処理水」と呼ばれています。

これは東京電力福島第一原子力発電所の建屋内にある様々な放射性物質が基準値を越えて含まれている水(=汚染水)を、アルプスという放射性物質専用の浄水設備のようなもので基準値を満たすまで浄化した水(=処理水)のことです。

誤解されがちですが汚染水と処理水は全く別物です。

ではなぜこの処理水が問題視されているのかと言えば、アルプスという装置ではトリチウムという放射性物質を除去できないからです。

トリチウム
なぜ除去できないのか

それは「普通の水(=H2O)」と「トリチウム水(=HTO)」が、ほぼ同じ物質だからです。

トリチウムという放射性物質は特殊な水素のことで、三重水素(Tもしくは3H)とも呼ばれています。

この三重水素は水素の放射性同位体というもので、放射性物質でありながら、その特性は通常の水と大差ないといえます。

水分子(H2O)が作られるときに、水素が2個ではなく3個くっつき、本物に近い水素が3個付いたトリチウム水が存在するのです。

これはお金でいうところの精巧にできた偽札のようなもので、パッと見では偽物とわかりません。

他の放射性物質のような「汚れ」とは違い、その些細な差を簡単に判別する方法がないため、トリチウムを分離することができないわけです。

なおトリチウムは体重が60㌔程度の人の場合なら一般的に50ベクレル程度を体内に保有していると考えられており、とても身近な放射性物質とも言えます。

安全性の検証

トリチウムは身近な放射性物質ではあるものの、健康被害に関する評価はまだ実験段階にあります。

ただし、その危険性はさほど高くはないと考えられています。

トリチウムの放射線はベータ(β)線と呼ばれるものです。

ベータ線を遮断するためには通常薄い金属の板が必要です。

しかし、トリチウムの放つベータ線は比較的エネルギーが小さく、紙一枚でも遮断可能です。

そのため、外部被ばくに関しては人体への影響が殆どないと考えられています。

一方で内部被ばくに関しては懸念の声が挙げられています。

①偽物の水分子として存在しているため、体内に取り込まれやすい。

②水(H2O)と同様に私たちのカラダの細胞やDNAを構成する際に材料として使われてしまう可能性がある(有機結合型トリチウム)。

内部被ばくと聞いて怖いのが生体内に留まったり、濃縮されたりしていくことですが、トリチウム水は基本的に普通の水と変わらないので、普通の水と同様に新陳代謝によって体の外へ排出されていき、濃縮は起こらないと考えられています。

トリチウムの海洋放出

海洋放出はコストと安全性と実績という視点から見て非常に優れた手段であると言えます。

福島第一原子力発電所から発生したトリチウムは、事故から10年後の2021年4月時点では約780兆ベクレルと推定されます。

これに対し、天然のトリチウムは毎年世界全体で約7京(70,000兆)ベクレル発生しており、現在地球上には100京ベクレル以上存在していると言われています。

また、東日本大震災以前からトリチウムの海洋放出という手段は全世界で実績があり、日本もこの方法を採用していました。

実際、事故以前は日本全国の原発から年間にして約380兆ベクレルのトリチウムを大気や海洋に放出していました。

ちなみに原発を利用している国では現在もトリチウムを放出しています。

隣国である中国では年間に907兆ベクレル、韓国では205兆ベクレルが海洋放出などで処分されています(2019年データ)。

さらに言えば国内では福島以外の原発から現在もトリチウムが放出されており、今回問題となっている福島第一原発のトリチウムを処分する際には事故以前よりも薄めてから放出することになっています。

国の基準は6万ベクレル/Lですが福島第一原子力発電所から放出される処理水は43~63ベクレル/Lと非常に薄められていて年間の放出量22兆ベクレルとなっています。

福島第一原子力発電所の処理水を全て海に放出するには30年以上掛ると言う事です。

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