バーチャルウオーター(仮想水)
みなさんこんにちは
特殊水処理機『新ん泉』の櫻井です。
近年水資源の有効活用の尺度としてバーチャルウォーター(仮想水)という概念が使われることが多くなってきました。
水資源需給が世界各地域で深刻化して、ますます問題となってくる時代、今回はバーチャルウォーターについて考えてみましょう。
バーチャルウォーター!?
食料を輸入している国(消費国)において、もしその輸入食料を生産するとしたら、どの程度の水が必要かを推定したものであります。
90年代初頭にロンドン大学教授のアンソニー・アラン氏がはじめて紹介した概念です。
例えば、1kgのトウモロコシを生産するには、灌漑用水として1,800リットルの水が必要です。
また、牛はこうした穀物を大量に消費しながら育つため、牛肉1kgを生産するには、その約20,000倍もの水が必要です。
つまり、日本は海外から食料を輸入することによって、その生産に必要な分だけ自国の水を使わないで済んでいるのです。
言い換えれば、食料の輸入は、形を変えて水を輸入していることと考えることができます。
バーチャルウォーターを考える際には、穀物や畜産物、工業製品の生産に、単位重さ当たりなどでどのくらいの水が利用されているか、という「水消費原単位」を知ることが必要です。
東京大学の沖教授らは、農業生産のプロセスに立ち返り、「日本で灌漑により生育したとしたら、米、小麦、とうもろこし、大豆1kgあたりどのくらいの水資源が必要とされるか」を体系的に推計しました 。
これによると、光合成効率の良いとうもろこしでも粒のみを考えると重さあたり1,900倍、精製後の小麦では2,000倍、精米後の米では約3,600倍の水を利用している勘定になりました。
日本が年間に輸入している小麦やとうもろこし、大豆の量にこれらの水資源原単位をかけて推計すると、アメリカやカナダ、オーストラリアや南米から年間約400億トン(㎥)程度の仮想水が輸入されていることがわかりました。
これは日本国内の農業で使用する水資源の約80%に相当する量で、食糧を海外の水に依存していることがわかります。
ハンバーガーも水依存?
具体的にバーチャルウォーターを計算してみましょう。
今や、国民食ともいえる若者に欠かせないハンバーガーですが、これを例に計算するとハンバーガー1個に使用される牛肉は45g、パンは同じく45gです。
牛肉45gを生産するのに必要な水資源を算出すると927L。
パンは72Lが必要です。
したがってハンバーガー1個を作るのに必要な水資源量は999Lとなり、500mLのペットボトルの水に換算すると約2,000本の水を消費して作られることとなります。
ハンバーガーに使う牛肉やパンはほぼ全量を輸入に頼っていますので、日本国内でハンバーガーが1個食べられる毎に海外の水を約1,000L消費していることになります。
同様に国民食といわれるような人気メニューを計算するとカレーライスはバーチャルウオーターで1,095L、牛丼は1,889L、塩ラーメン970L、コーヒー1杯210L(コーヒー豆の生産に必要)といずれも大量の水資源の利用を必要としており、日本は飲料水だけでなく、食糧を通じて水資源の輸入大国となっています。
水資源が国際紛争に
バーチャルウォーターは水資源に乏しい国の水資源有効利用のために開発された概念ですが、これからの国際貿易や国際紛争を解決していくうえでこの考え方を利用することが大切になってきます。
世界の水資源量をアセスメント(評価)して、水ストレス指標の高い地域(需要と供給がアンバランスになっている)を算定すると、北米から中国、インド、西南アジア、欧州まで広がっています。
特にアメリカ合衆国西部等で非常に大きな値を示しており、こうした領域では、その地域内で消費する水資源だけではなく、他地域での消費に供する農業製品等の生産のために、大量の水資源を利用していることが推察されます。
すなわちバーチャルウォーターの提供地域は水ストレスが高くなっていることがはっきりと示されています。
世界の人口増加により、水の需要はますます増加が見込まれます。
21世紀後半には世界各地で水資源をめぐる国際紛争が勃発する可能性が高く、日本のように国内の水資源は比較的豊でも、バーチャルウォーターの依存度の高い国は安全保障の点から早急に対策が必要と思われます。
水と安全が「タダ」というのはもはや過去の幻想になってしまいました。