果物と水分
みなさんこんにちは
特殊水処理機『新ん泉』の櫻井です。
実りの秋、食欲の秋といわれますが、果物も初秋のなし・ぶどう・くりから晩秋のみかん・かき・りんごなど秋は果物も豊富な季節です。
果物のおいしさはその水分と密接な関係があり、生育段階でのかん水(水分コントロール)が品質に大きく影響します。
今回は果物とそのおいしさや品質を左右する水分について考えてみましょう。
水分ストレスと果物
生物はその育成段階で水分を必要としますが、果物の場合にはその影響が果実の大きさや品質などに特にはっきりとでます。
樹木がどのくらい水分を必要としているか(=どのくらい渇いているか)を水分ストレスと言い、生産者が樹木にかん水(水を与える)を行う重要な指標としています。
ミカンの場合4月-6月の発芽、開花、結実期にはある程度の(圃場の許容水量の60-80%)の水が与えられないと生育障害が発生します。
7月~8月中旬の光合成の盛んな果実肥大盛期に土壌水分が不足すると、果実肥大が抑制され、果汁成分の低下を招き、品質が劣化します。
8月下旬~収穫期には成熟過程で温暖、多雨の状態が続くと皮が浮き上がることになり、土壌水分が豊富にあると果実肥大はなお盛んとなり、とくに果皮の肥大、果汁の糖、酸含量が低くなるので、幾分乾燥気味に推移させる必要があります。
しかしながら長期にわたって土壌水分が低下すると果汁は濃縮され、糖度は高くなるが、減酸が遅れ、酸味の強い果実となり、また表皮に柚肌のような現象がおこり、小玉比率が高くなるので、過度の乾燥に陥らないように留意する必要があります。
さらに収穫後~3月 には 生長が休止し、気温も低いので消費水量は少ないが、長期の干ばつが続くと吸収機能が低下し、落葉被害が多くなるのでこの時期でも土壌水分をコントロールして樹木の水分ストレスを適切に保つことが必要です。
要するに1年を通じて水分コントロールを行わないと良いミカンにはならないということです。
果物は生きている
果物が魚や肉と大きく異なるのは収穫後も細胞が生きている点です。
生きているので呼吸もすれば水分も蒸発します。
呼吸とは、空気中の酸素を取り入れ内部の糖類や有機酸を燃焼してエネルギーを作り出のに水分が蒸発するのでしおれてしまいます。
果物は収穫後も呼吸促進や葉緑素分解、成熟促進などを引き起こすエチレンガスなどの成熟ホルモンを作り続けています。
これが消耗に拍車をかけます。
そして、生命力が低下すると微生物の繁殖を招き、カビたり腐ったりするのです。
果物の多くは採りたてが品質的にも最高の状態です。
ただしなかにはバナナや洋梨、メロンのように、収穣後、時間が経ったほうが適度な柔らかさになり甘みが増し、追熟するものがあります。
これは、収穫後に果物中の酵素作用が活発になるためで、成分のデンプン質が糖に変化して甘味が増すのです。
置いておくと赤みが増すトマトもこの仲間です。
生鮮食品の鮮度保持に共通して効果的なのは温度を低くすることです。
果物の場合も生命活動は低下し、微生物の活動も弱まります。
生きていける最低の温度にすれば、細胞を休眠させることになります。
果物の鮮度が劣化する率は、10℃の温度上昇に対して2~4倍進むといわれています。
通常の室温では0℃のときに比べて5~10倍以上の鮮度劣化となります。
そのため、収穫された果物は出荷前に適正温度まで冷却しておく、予冷されているケースが多くなっています。
青果物の中にはバナナやトマト、ピーマン、オクラなど熱帯地を原産とするもので、低温にすると変色や斑点などの障害を起こすものがあり、種類ごとに適した保存温度があります。
おいしさを見分ける?
果物の美味しさの決め手の一つとなるのは「糖度」。
つまり、100g中に含まれるブドウ糖、果糖などの割合です。
果物の外観から十分に甘いかどうかを見極めるには、どこに注目すれば良いでしょうか。
巨峰やピオーネなど黒系のブドウの場合、色の濃さに注目するとよいようです。
糖度の高いものは色が黒く、低いものは赤みを帯びています。
一方、マスカットなど青系のブドウは、黄みを帯び、かつ香りが強いほど完熟しており、糖度が高いと言う事です。
黄みを帯びると過熟に見えるため、翡翠色のやや若い段階で出荷されがちですが、見た目に惑わされてはいけません。
リンゴの場合、皮が赤いほど熟して甘いと思う人もいるかもしれませんが、赤さの度合いは必ずしも甘さと一致しません。
色で見極めるなら、尻の部分に注目。尻が緑色のものより黄色い方が熟度が進み、甘いようです。
しかしながらおいしさは複数の要素のバランスで決まります。
ある程度の酸味がないと味がぼやけてしまうという人もいるようです。
適度な水分がなくても「ジューシー」さに欠けておいしく感じられません。
おいしさには水分のコントロールが欠かせません。