樹氷
みなさんこんにちは
特殊水処理機『新ん泉』の櫻井です。
今季の冬も終盤です。
スキーヤー、スノーボーダーにとって降雪情報は気になるところです。
今年は各スキー場の積雪も多く十分楽しんでいると思います。
その楽しみの一つに蔵王が有名ですが樹氷があります。
自然が作り出す天然の造形フォルムですが、実は樹氷も様々。
今回は樹氷について考えてみましょう。
樹氷は霧氷!?
樹氷は気象学からいえば霧氷の一種です。
霧氷(むひょう)は、氷点下の環境で、空気中の過冷却水滴もしくは水蒸気が、樹木その他の地物に衝突して凍結もしくは昇華することでできる、白色~無色透明の氷層の総称です。
いわば自然現象としての着氷現象のことです。
大きくは樹氷・粗氷・樹霜の3つに分類されます。
樹氷(soft rime)は、冬山などで、過冷却水滴からなる濃霧が樹木などの地物に衝突し、その衝撃で凍結・付着した氷層で、一般的には氷層を付着させた樹木そのものを指して樹氷と呼んでいます。
気温-5℃以下の環境で生じ、粒状構造の脆い氷で風上側へ向かって羽毛状に成長します。
風が強いほど風上に成長し、この様を俗に「海老の尻尾(えびのしっぽ)」などと呼んでいます。
気泡を多く含むために不透明で、白色を呈し、樹氷が付着している物体を揺らすと、樹氷は簡単に落ちてしまいます。
日本では蔵王の樹氷林が有名で、樹木が完全に樹氷や雪によって覆われたものは「スノーモンスター」とも呼ばれています。
その他では八甲田山や八幡平、富士山のものがよく知られていて、宮崎県五ヶ瀬町など九州の高山地帯でもきれいな樹氷を見ることが出来ます。
粗氷(hard rime)は、過冷却水滴からなる霧が、樹氷と同様のメカニズムで樹枝などの地物に凍結した半透明かほぼ透明の付着した氷で樹氷に比べ霧粒や雲粒が大きく、樹氷よりも組織が大きめです。
気温-2~-10℃の環境で生じ、粗氷は比較的よく、くっついていますが、それでも物体から引っ掻いて取ることは出来ます。
日本では雲仙岳の粗氷林が有名ですが、寒い地方では平地でも普通に見られます。
大気中では、相対的な風に面した飛行機の一部分に付着することもあり、飛行機の障害として問題になることもあります。
↑ 蔵王国定公園の樹氷原
蔵王の樹氷
どうして蔵王には樹氷ができるのでしょうか?
日本海を吹き渡るシベリアからの北西の季節風が、対馬海流(暖流)からたっぷりと水蒸気をため込んで、雪雲となって発達します。
この雪雲はやがて朝日連峰にぶつかり、上昇気流となります。
このとき断熱膨張により著しく温度が下がり、含まれた蒸気が凝結核のまわりに凍りつき、多量の雪となって朝日連峰に降りおちます。
残った雪雲は、山形市を通過して蔵王連峰にぶつかり、上昇気流となって再び雪を降らせます。
ただしこの時の雪雲には凝結核が少ない為、含まれる蒸気は、0℃以下でも凍らない過冷却水滴となって雪と混じり合った状態をつくります。
この過冷却水滴がこの時期特有の北西からの強い風によってアオモリトドマツの葉にぶつかって樹氷が出来るのです。
ちなみに過冷却水滴が小さい宮城蔵王は、綺麗な樹氷ができると言われています。
良い樹氷ができるためには
(1)樹氷は、アオモリトドマツの木に氷と雪が付いたものなので常緑樹が自生していること。
(2)雪が適量に降ること。降雪が多すぎても少なすぎてもだめです。
(3)冬型(西高東低)の強い気圧配置で、強い西風が吹きやすい地形であること。
(4)山の西斜面が良いこと。湿った空気が蔵王の西斜面に吹き付けると、上昇気流となり水蒸気が過冷却水滴、つまり雲粒となります。
櫛状の形をしたアオモリトドマツの葉に、強い西風にのった過冷却水滴が衝突すると、一瞬にして氷になります。
こうしたいくつかの条件が重なって蔵王独特の樹氷群が形成されます。
まさに自然のフォルムです。
樹氷がなくなる?
山形大学の柳沢教授の研究によると 蔵王で樹氷ができるのは、前述のようにアオモリトドマツなどの常緑の針葉樹だけで、落葉広葉樹にはできず、それらの樹木に独特の気象条件が重なって樹氷が形成されています。
蔵王では現在、標高1550~1600メートル付近で見られるが、1914年には1400メートル付近で発見されていて、当時は「雪の坊」「雪コブ」と呼ばれて次第に有名になりました。
現在の樹氷は通常、2月初めが見頃となっています。
1939年の記録には12月9日に出現したと記録が残っております。
1930年代後半から45年にかけて平均気温が低くなった時期がありましたが、戦後の47年から平均気温は再び上昇に転じており、100年間で約2度上がっているとのこと。
気温の上昇は樹氷の標高も押し上げ、80年代には1500メートル地点、90年代には1550メートル地点まで上がってきています。
このように気温の上昇が続くと 現在、1550~1600メートル地点で見られる樹氷は温暖化が進んでさらに気温が1度上昇すれば、単純計算で約40年後には1700メートル以上でしか見ることができなくなり、1700メートル付近になると、樹氷のできる樹木がないので、このまま温暖化が進めば蔵王では樹氷が見られなくなるということになりそうです。
もちろん気温上昇に伴って植物分布も変わりますが、地球温暖化が樹氷にも影響があることは間違いないようです。