海洋深層水

地球上で年間を通して変わらず、安定しているものの一つとして、海洋深層水があげられます。

ご存じのように海洋深層水は水深数百mの深い海の海水をくみ上げて利用しているのですが、この利用も定着してきました。

今回は海洋深層水について考えてみましょう。

深層水の特色

現在海洋深層水の国内の取水施設は11都道県19施設ありますが、取水コストを考えて陸地から急激に深くなる海底地形をもつところが多く、島(新潟県佐渡島、沖縄県久米島、鹿児島県甑島)や半島の先端(高知県室戸、神奈川県三浦、北海道羅臼)に多く設置されています。

海水の表層水との違いは、大きく分けて清浄性、無機栄養塩類が豊富、低温安定性という特色をもつことです。

1)清浄性

人間の排水等で汚染された河川水や雨水の影響を受けないため、化学物質による汚染がない。

また、太陽光が届かないためプランクトン等が成育しないので、有害な雑菌等も表層水の千分の一以下と少ないことが特徴です。

このため、深層水は表層水に比べて細菌学的にも化学的にもはるかに清浄です。

2)無機栄養塩類が豊富

表層水に比べて、植物プランクトンの成長に必要な無機栄養塩類(NO3-ショウ酸態窒素、PO4-リン酸態リン、Si ケイ素)が豊富です。

これは海洋深層水中には植物プランクトンが少ないために、表層から沈降してくる魚類の死骸が分解されて生じた無機栄養塩類が消費されずに残っているためなのです。

3)低温安定性

水温をはじめ含まれる成分が年間を通して一定であり、水質が安定しているという特徴があります。

なお、深層水が特定の海域で表層へ上昇する(湧昇)場所がありますが、深層水には豊富な無機栄養塩類がありますので、表層部に行くとそこでプランクトンが豊富に発生するため、そのプランクトンを求めて魚が集まってきます。

深層水が上昇する海は非常に生物生産性の高い海域となり好漁場となっています。

深層水の大循環

前述のように深層水(deep ocean water)は、深度200メートル以深の深海に分布する、表層とは違った物理的・化学的特徴を持つ海水のことです。

これは産業利用上の定義であり、海洋学での深層水は大洋の深層に分布する海水で、代表的なものは北大西洋のグリーンランド沖と南極海で形成される深層水(北大西洋深層水と南極低層水)です。

規模の小さなものはいくつかあり、日本近海を例にとると

1)「海の大循環」と呼ばれる海洋性の深層水

2)ベーリング海から来る北太平洋中層水と呼ばれる深層水

3)東南アジアを通ってくる(沖縄近海の海の盆地)の深層水

4)日本海を循環する固有水

5)オホーツク海近海で循環する固有水などがあります。

このような深層水の循環は熱塩循環(海水の密度はこの熱と塩分により決定されている)とも呼ばれています。

メキシコ湾流のような表層海流が、赤道大西洋から極域に向かうにつれて冷却し、ついには高緯度で沈み込みを始めます。(北大西洋深層水の形成)。

この高密度の海水は次第に深海底に沈み、深海底を南米沖、南極、南太平洋と移動して1200年後に北東太平洋に達して再び表層に戻ります。

この間それぞれの海盆の間で広範囲に渡って混合が起こり均一化することで海洋の世界的なシステムを作っています。

この深層水の大循環は言いかえると、巨大な水塊の移動でその移動に伴って(熱)エネルギーと物質(固体、溶解物質、ガス)を運んで地球上を移動しています。

このため、この循環現象は地球の気候に大きな影響を与えていることが分かってきました。

これらの深層水は熱塩循環によっておよそ数百~二千年かけて世界中の海洋底を移動しており、千年単位の地球の気候にも重要な関わりを持っています。

深層水なす

深層水は農業にも利用されておりその一つが高知県室戸の深層水なすです。

室戸の生産者グループはナスの生産日本一を誇る土佐の高知で「もっとおいしく、 より健康に良いなすをつくりたい」との思いから、平成10年より室戸海洋深層水の利用試験研究を始めました。

平成12年3月に研究活動・試験内容が認められ、高知県の 商標登録、室戸海洋深層水ブランドマークを取得しました。

栽培は室戸岬沖水深374mから汲み上げられた天然ミネラルがバランス良く含まれた深層水の原水を逆浸透ろ過し、土壌潅水と葉面散布に一定量使用するというものです。

平成14年より生産農家32戸で本格的な出荷を開始し、現在、高知県室戸市羽根町、吉良川町のなす栽培農家39戸が栽培しています。

飲用としての深層水

深層水は表面水より多量のミネラルを含み、又無菌であることを謳い文句にして非常に身体に良い水のように宣伝・販売しているところがあります。

しかしちょっと考えるとなにかしっくりきません。

有益なミネラルが多量に含まれていたとしても、それを私達の飲料水として利用するとなると まずは主要な溶存塩を取り除かなければなりません。

この塩分を取り除くためには、逆浸透膜を利用するしかありません。

逆浸透膜を使用すると、有益なミネラルは全て除去された水になってしまいます。

深層水には有益なミネラルが多量に含まれていて体にとても良さそうなイメージですが、逆浸透膜でその有益なミネラルは全て除去されてしまいます。

有益なミネラルが全く含まれていない水を飲むことになってしまいます。

とても矛盾したことになってしまいます。

また、清浄で有害物質を含まないとはいえ、これを海から取り出して飲用水として利用するというのは、陸から得られる水でも同様に逆浸透膜を利用して細菌や有害有機物質を取り除く事は出来ますので、特段に深層水を選ぶ必要はないことになります。

100年かかって富士山の地下から湧きだした水とか、アルプスの清水とか或いは海洋深層水というと、それだけで特別な素晴らしい水の先入観がありますが、実際はどうでしょうか?

これはよく考えてみたいものです。

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