氷河
みなさんこんにちは
特殊水処理機『新ん泉』の櫻井です。
夏に氷はつきものですが、その氷の塊である氷河も地球の歴史では大きな意味を持っています。
そして地球温暖化の影響でこの巨大な「水分蓄積」機構も大きな変動を受けています。
今回は氷河について考えてみましょう。
氷河の価値
氷河は氷の塊ですが、元は当然雪です。
比較的温度の高い氷河は、融解と凍結を繰り返してざらざらしたネヴェ(ざらめ雪 granular snow)と呼ばれる雪と氷の塊状態になります。
さらにこのネヴェは氷と雪の層の下で圧力を受けて融解し、フィルンという氷の粒に変化します。
フィルンの層は一定の年月を経ると、さらに圧縮されて氷河の氷(glacial ice)となります。
氷河には発達した地域によって2種類の形態があります。
一つは山岳地に形成される山岳氷河で、もう一つは主に南極大陸とグリーンランドの広大な面積を覆う大陸氷河です。
山岳氷河の温度は一年を通して、表面から底部まで氷の融点(0度)付近にあることが知られています。
一方、極地の氷河は水の激しい昇華冷却により、常に氷点下にあり融解することはありません。
氷河の中で最も小規模なものは、山岳地帯の谷間に存在することから、谷氷河(valley glaciers)と呼ばれるもので、それより少し大きな規模のものは、山から流れ出る流出氷河(outlet glaciers)です。
山の頂上にある雪の塊が氷河となって、山脈はもちろん、火山をも乗り越え、氷の舌のようになって谷あいに流れ出て行き、流出氷河を形成する。
この流出氷河は、氷河全体から見れば、まだまだ小規模なものですが、海にまで達することがあります。
氷河の中で最も大きなものは氷床です。
それは地表面のほとんどの地形をその下に覆い隠すもので、氷床は、現在では南極大陸とグリーンランドだけに存在し、これらの地域に膨大な真水が存在する理由になっています。
それがどれくらいの量かというと、グリーンランドの氷床が全部融解すれば世界中の海水面が6メートルも上昇するといわれています。
もし南極の氷床が融解すると海水面が65メートル上昇するといわれています。
すなわちこれらの氷河が存在することが「水の惑星」と呼ばれる地球にとって必要な巨大な真水が安定的に保水されているということなのです。
氷河融解
氷河の融解の有無を基準とすると、1年中まったく解けない真極地氷河、夏には全域で表面が融解する亜極地氷河、表面を除いて1年中少しずつ溶け出している温暖氷河の3つに分類されます。
亜極地氷河と温暖氷河の融解は夏に最も早く大規模になる一方、温暖氷河の一部を除いて、冬は全ての氷河で降雪により氷河に新雪が蓄積されていきます。
この夏の融解量と冬の蓄積量の差を氷河質量収支(Glacier mass balance)といい、長期的な氷河の量の変動を見るためのデータとして用います。
氷河質量収支がほぼ0ならば、氷河の量は変化していないことになります。
氷河質量収支に差があり、融解量が上回れば氷河は縮小していることになり、蓄積量が上回れば氷河は拡大していることになります。
この氷河質量収支を見ると1550年ごろから1850年ごろまで、地球は太陽活動の低下が主因と見られる小氷期に入っていて収支はプラスですが、その後の1940年代ごろまでは、この小氷期からの温暖化(回復過程)によるものと見られる氷河の融解が世界的に進んでいます。
1980年代以降は再び融解が加速しています。
1995年~2000年の間にアルプス山脈の氷河のうち、スイスの110個のうち103個が後退し、オーストリアの99個のうち95個、イタリアの69個の全て、フランスの6個の全てが後退しています。
1870年に比べるとモンブラン氷河は1,400mも後退し、全長11km・厚さ400mとフランス最大の氷河であるMer de Glaceは、130年間で8.3%分に当たる約1,000mも後退しました。
特に1907年以降の10年ほどで厚さは27%分に当たる約150m薄くなりました。
南極や北極の氷河については、大規模な崩落や氷山の漂流が報告されており、特にラーセン棚氷( 南極半島 東岸に存在する 棚氷)の崩落は大規模なものであったようです。
北極についても海氷の縮小が報告されています。
氷河の融解により考えられる影響は、多岐にわたりますが、まず、洪水が発生することが考えられます。
下流に鉄砲水や土石流として大量の水が押し寄せるようなことが増加し、実際に、スイスのアルプス山麓の村では数十年に一度という洪水が起きています。
次に氷河を水源としている河川の流域では水不足や渇水に見舞われています。
もっとも大きい世界的な影響は海面上昇で、最新の予想では、今後2100年までの海面上昇は0.18~0.59mでモルジブなどの島国では国自体が消滅することが危惧される状態です。
日本の氷河
北アルプス立山連峰の雄山(標高3003メートル)にある御前沢雪渓で進められていた氷河調査について、雪渓下の氷体は「現存する氷河である可能性が高い」とする調査結果が昨年報告されました。
日本で最も大きい越年雪渓である御前沢雪渓(長さ700メートル、幅200メートル、厚さ最大30メートル)で実施された調査で 雪渓下の氷体は中央部にあるモレーンと呼ばれる丘を境に上流部と下流部に分かれており、下流部の方が氷体がぶ厚く、上流部では1~2センチしか動いていませんが下流部では、約1カ月間で6~30センチの幅で、雪渓の傾斜方向に向かって氷体が移動していることが確認されました。