塩(1)

昨今、「減塩」と言う言葉をよく耳にしますが、実は塩が動物にとって非常に重要な働きをしていることはご存知でしょうか。

今回は影の功労者「塩」について考えてみましょう。

海と塩

塩こと塩化ナトリウム(NaCl)は地球上の動物にとって必要不可欠なものです。

地球は今から46億年ほど前、ちいさな惑星が衝突を繰り返して誕生したと言われています。

生まれたばかりの地球は、地表の温度が1500度以上もあったとされており、地面から吹き出る水蒸気や火山ガスに包まれ、その当時は海もありませんでした。

その後、高熱を帯びていた地表が冷えてくるとともに、地面から吹き出ていた水蒸気が雨となり、低い場所に溜まることで海が誕生しました。

この雨は塩素(Cl)を含んだ酸性雨(塩酸)でした。

この酸性雨が岩の中に含まれているナトリウム(Na)などの成分を溶かし出し、塩素とナトリウムが出会い塩(NaCl)となります。

塩は水と違い簡単には蒸発しないため、徐々に海水の中の塩の濃度が高くなり、海は塩辛いと言われています。

ただし、現在は海から外に出て行く塩の量と、新しく海に入っていく塩の量のバランスがとれているので今後徐々に塩辛くなっていくということはないそうです。

海水を舐めた経験のある人は非常に塩辛かった印象をお持ちでしょう。

それもそのはず、海にはおよそ3%の濃度で塩が溶け込んでいるのです。

「たったの3%」と思う人もいるかもしれませんが、一般的においしく食べられる塩の濃度は1%程度がめやすであると言われています。

その3倍にあたる濃度で塩が溶け込んでいるため海は非常に塩辛いのです。

塩と生命

地球最初の生命は、海の中で誕生し、その生命はたったひとつの細胞からなる単細胞生物でしたが、やがていくつもの細胞を持つ生物に進化していったと考えられています。

実は、海から発生した生命の細胞というのは塩水に包まれた環境でないと生きていくことはできません。

そのため、塩のない川や地上で暮らす動物たちは塩を含む体液で身体を満たすことで、細胞を塩水で包み込み、海の外に出ることを可能にしたと考えられています。

つまり、生物の体は塩水に守られていると言っても過言ではないのです。

ちなみに成人した人は体重の約60%が水分であると言われています。

そのうち3分の2は細胞の中に、残りの3分の1は細胞の外にあります。

この細胞の外にある水分のことを体液といい、血液もそのひとつです。

身体の中で塩はおもにこの体液に溶け込んでおり、血液は約0.9%の塩分濃度で常に一定になるように腎臓で調整されています。

この濃度が濃いと血液中の赤血球は浸透圧の関係で赤血球内の水分が奪われてしまい、逆に薄いと水を取り込みすぎて破裂するものが出てくることもあります。

つまり塩は細胞を包み込み細胞の崩壊を止める働きをしてくれているのです。

塩の摂取

動物において塩が必要であることは説明しましたが、動物はどのようにして塩を身体に取り入れているのか考えてみましょう。

肉食動物は他の動物をとって食べることで塩を補給します。

動物のカラダには、人間の身体と同じように、血や骨などに塩が含まれています。

そのため、肉食動物は捕食した動物のカラダ以外からあえて塩を取る必要はありません。

しかし、草食動物の場合は違います。

草食動物が食べる草や樹の葉などの植物には塩が含まれていません。

そのため、野生動物は海水や岩塩を舐めることで塩を摂取しています。

牧場などでは家畜が盛んに塩を欲しがるので、塩を混ぜ込んだ飼料や塩のカタマリを与えています。

チベットや中国のヒマラヤ山脈に住むターキンというウシ科の動物は春から夏にかけて、標高差2500メートルにおよぶ大移動を行います。

その目的のひとつは、標高4000メートルの場所にある塩水の泉だと言われています。

このように、草食動物にとって塩の確保が非常に重要であることが伺えます。

実は大昔の日本人も肉食動物のように動物や魚介類を食べることで、十分な量の塩を身体に取り込んでいたため、塩を使わずに生活していました。

しかし、縄文時代の終わりから弥生時代にかけて、農耕が始まり、主食が植物である米やヒエ、アワなどになると海水などから塩をとるようになっていったのです。

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